日本一の個人投資家・竹田和平さんの旦那的投資法

竹田和平さんという人がいます。「タマゴボーロ」で有名な竹田製菓をほぼ1代で築き上げた経営者なんですが、投資の世界でも有名人なのです。

なんで有名なのかというと、竹田さんは何十社もの上場会社の大株主(会社としてではなく、個人として名前が出てくる)だからで、「日本一の個人投資家」などと呼ばれているそうです。

で、当然どうしてそんなポジションを占めることができるのかと興味を持つ人がいるわけで、こんな本が出ています。

旦那本日本一の大投資家が語る大貧民ゲームの勝ち抜け方—上場会社・約70社の大株主・竹田和平さんの旦那的投資哲学

長い題名ですなあ。中身を大きくまとめると

  1. 竹田さんの生い立ちから現在に至る伝記
  2. 竹田さんの経験に基づく投資哲学
  3. 著者の水沢氏による、竹田さん的な銘柄選択の実践ハウツー

といった構成になってます。

伝記はまさに山あれば谷、という感じで、戦後の混乱期に配給の砂糖を元にボーロを作り始め、投資を繰り返して事業を拡大し、倒産の危機や不況に見舞われながらもそれを切り抜けていく竹田さんの姿と、その試練のたびに何を学んできたかが竹田さんのインタビューを元に語られます。

印象的だったのは昭和40年代のボーリングブームの時の話。竹田さんはブームに乗ってボーリング場の経営を手がけましたが、ブームが終わると一気に客足は減り、そして2度と戻ってこなくなりました。周囲の同業者が次々撤退していく中、竹田さんはつぶれたボーリング場を「土地代だけ」、つまり上ものの施設はタダという条件で買って細々と営業を続けていきます。

結果、それまで他の(つぶれた)ボーリング場に通っていた熱心なボーリングファンが竹田さんの店に集まるようになり、それなりの利益を上げるようになったそうです。

ここで竹田さんは「どんなものにも適正価格というものがあり、適正価格はそれが生み出すキャッシュによって導かれる」ということを学んだと言います。DCF法の考え方そのものなんですが(ちなみにDCF法というのは1970年に提唱されたとか)、世の中がその考え方どおりに動いていないことはバブル経済(&ネットバブル)の余波の続くいまを生きる皆さんがご存じの通り。

この考え方は、竹田さんの株式投資のスタイルにも引き継がれています。竹田さんの投資スタイルとは、中型、小型の割安株を指し値で買って、あとはずっと持ち続ける(バイ&ホールド)というもの。で、「割安かどうか」は四季報などに出てくる財務・営業データをもとに決める、と。ここで名言。

「ぼくは夢は買いません。投資先の会社の明日なんて、実際にはその会社の社長にだってわからないからです。(中略)株で失敗する人は多いけれど、みんな明日の夢ばかりを買いすぎるのが原因だと思います。だからケガをするのです」

土地神話やインターネット万能説を信じて失敗した人は数知れず・・・最近で言えば新規公開株神話、なんてのもできていそうな気がする。

実践ハウツーの部分では、実際に「会社四季報CD-ROM」を使って割安銘柄を探すハウツーが書いてありますので興味のある人は読んでみてください。

ただ、この本を読んでわたしが注目したのは、竹田氏のハウツーそのものよりも、「竹田製菓がある時期から新規投資を抑えた」という事実です。

日本の人口が急拡大する時期も過ぎ、甘いものであれば売れた時期も過ぎ、市場が成熟した時、竹田さんは自社の事業の拡大を止めてしまい、その後は地味な無借金経営に徹したとこの本には書いてあります。つまり、上のボーリング場への投資や、株式への投資は、完全に元を取った製菓事業からのキャッシュに支えられていたということです。

ふつうの企業では、ある製品が成長期を過ぎ成熟期に入ると、新規事業に投資して、次の金のニワトリを育てようとします。しかし竹田さんはそれをせずに身の丈経営を続けたと。だからデフレ期に資産を減らすことなく、割安になった資産を買い続けられたわけです。

竹田氏の考え方に比較的近いと思われる「さわかみファンド」の澤上氏は、下落相場に臨んで、「今月は力のない相場展開でしたが、ファンドを定期購入してくれるみなさんの資金のおかげで、ごきげんの買い増しができました」というようなコメントを出します。竹田氏は同じようなことを「上げて良し、下がって良しの相場かな」と表現します。

相場が下げているとき「買い増しのチャンスだ」と思えるためには、不況期にも継続的にキャッシュを生み出す手段(竹田氏の場合は定番のタマゴボーロ、澤上氏の場合はファンド購入者の60%を超える、毎月の自動購入を行っている人)を持っていることが条件である、ということに気づいている人は意外と少ないではないでしょうか。

著者の水澤氏はハウツー伝授の部分で「われわれ庶民もITを駆使することで竹田さんの投資に近づける」というような事を書いていますが、わたしならここに「継続的な収入さえあれば」という但し書きをつけますね。

ともあれ「タマゴボーロで億万長者」なんて、いかにもマンボウ的ではございませんこと?


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