ソフトバンク携帯の企業価値『0円』?

今日の日経金融新聞1面の記事「ソフトバンク 携帯の企業価値『0円』?」は良かったですね。要するに、ボーダフォンの買収資金の借り換えの時に、「携帯電話事業の証券化(携帯事業の利益は買収の借金返済に優先的に充てられる)」をしてしまっているため、借金を返している期間(7〜13年)、株主から見たら携帯事業の価値はゼロじゃん、という話。証券化について突っ込んだ記事はこれが最初じゃないでしょうか。

この話で前から気になっていたのは、証券化によって借金の利率が下がるということなんですね。

ソフトバンク、携帯事業を証券化 1兆4500億円調達 from フジサンケイビジネスアイ

債券の格付けは会社全体の格付けを上回るシングルA格を取得できると期待。利率は銀行借り入れより1%程度下げられると見込んでいる。

ソフトバンクという会社全体にお金を貸すより、ソフトバンクのモバイル事業(=旧ボーダフォン)だけに貸す方が利率が低い。逆に言えば、残された「モバイル以外の事業」への貸し出し利率(=投資家のリスク認識)は高い。トータルで見れば証券化の前も後もソフトバンクの事業自体は何の変化もないですからね。

考え方の説明図
事業自体が変わらないまま、一部資本の調達金利を下げるとどうなるかの図。それぞれの数字は適当です。その他の株主や債権者のリスクが高まるってことだけわかっていただければ。

つまりこれはモバイル事業から生まれるキャッシュを優先的に受け取る権利を売って、低い金利を買ったという取引です。言い換えると、「モバイル以外の事業への投資家へのキャッシュの配分を先延ばしにする(もしかしたら配分しないかもしれない)」ことで「負債返済で首が回らなくなる状況を脱した」ということでもあります。

いままで投資家は、「高収益の携帯事業も含めたキャッシュが出資の割合に応じて自分に帰属する」と期待して投資をしていたはずで、それがいきなり「携帯事業だけは別にします」と言われたわけですから、「リスクの高いモバイル以外の事業」を押しつけられた分、株価は下がって、社債の利率は上がる(債券価格は下がる)のではないかと思うのですが。


広告の「ゼロ円」がウソだとか、細かい文字がずるいとか言ってますが、そんなことはどうでもよくて、ホントは「新料金プランは実質値上げである」というところが重要だってことをなぜみんな言わないんでしょう。

「ドコモやauより○円高い・安い」というのは、「どの会社を選んでも同じ価値が得られる」という前提での議論ですよね。その前提が間違っているじゃないですかと。

もともとボーダフォンって
「つながらない、端末カッコ悪い、コンテンツ弱い、けれど安い」
というブランドでしたよね。一人あたりの月額料金支払い額で言えば他社より1000円ちょっと下だったわけです。

これがソフトバンクになったことで
「つながらない(改善予定)、端末は他社並み(にしたい)、コンテンツはYahoo!、200円安い」
に変わったわけです。

それを、
「つながる、端末続々、コンテンツ充実」
の他社と比較するんであれば、

「コンテンツの充実分」と「800円」(既存ボーダフォン顧客の視点)
もしくは
「つながらない」不利益と「200円」(他社顧客の視点)
とを比較するべきではないのかと。


こんなたとえ話はいかがでしょう。

S.Bさん(仮名)が借金して不動産(中古マンションか何か)を手に入れるとします。
その不動産を賃貸にまわして、賃貸収入を得ることにします。
そのマンションは立地がいいため、間取りの割に高い家賃を取ることができます。

しかし、S.Bさんはいろんなところに借金があったり、素行があまりよろしくなかったりして、銀行はなかなかマンション購入資金を貸してくれません。このままだと相当高い金利を要求されそうです。

そこでS.Bさんは、マンションを担保にするからと金利をまけてもらいました(まあ、これはマイホームを買うサラリーマンみんながやってることですが)。
さらに銀行から「返済期間を7〜13年くらいに短くしろ」と言われたので、賃貸収入のすべてを返済に回すことにしました。

その中古マンションは設備が古く、入居者は「住み心地はそんなに良くないけど、他のマンションに比べれば安いからいいか」という感じでポツポツと住んでいました。

この地域にはすでに大きなマンションがいくつも建っており、さらに次々と新しい物件が建設されています。また周辺の人口はこの先そんなに増えないと予想されています。

S.Bさんはとりあえず入居率を高めるために、「家賃0円!(管理費等20万円)」などという広告を出しましたが、案の定、入居希望者や他の業者から他の反発を受けました。「0円は誤解を与える表現だったが、月額合計25万円の隣のマンションより安いのは間違いない」とS.Bさんは釈明しましたが、「でも、家賃は立地だけじゃ決まらないよねえ」と周りの人は思いました。

借金は7〜13年後には返済する予定ですが、返済後に充分な入居者がいるかどうか、いたとしても充分な家賃を払えるかどうか、微妙だという人もいます。また、当然リフォームも必要になるはずです。

はじめのうち、「いい立地を他の業者が独占しやがって」と大騒ぎしていたS.Bさん。投資に当たって家族には、「これでこの地域の賃貸生活は変わる」と夢を語り、どんなにいい家賃収入が得られるかを説明していました。ところが、実際に家賃で暮らせるようになるのはずっと先の話で、しかもその実現性がどれだけあるのかを考えると、家族は・・・

・・・怒るだろうと、私は思うのですが。

あらかじめ小さな文字で予防線を張っておくと、負債が予想以上に早く返済できて、その後も充分なキャッシュが継続的に期待できるとなれば、株価が上がる可能性も否定できません。そのためにも、SB株主のみなさまには、SBケータイを有料通話時間帯にガンガン使うよう、自分以外の人にオススメしてください・・・(私には勧めないでください)。

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